「培養肉」という言葉を聞くと未来の食べ物というイメージがありますが、世界では商用化に向け開発が拡大しています。
2013年にオランダの研究者が、世界で初めて培養メンチ肉を作ることに成功してから10年が経ちました。
いま、世界各国で培養肉の研究開発が進み、商用化を目指しています。
あなたの食卓に培養肉が並ぶ日も、そう遠くはないでしょう。
なぜ培養肉の研究が進んでいるのか?
飼育コストと環境負荷の軽減
家畜を飼育するためには、大量の飼料、土地など莫大なコストが必要となり、環境破壊につながっています。
大量の穀物を輸送するために発生する温室効果ガス、家畜から排出されるメタンガスが深刻な問題となっているからです。
培養肉はこれらを軽減することができるため、世界的に注目を浴びています。
感染症リスクの防止
世界的にも家畜の感染症はおおきな問題となっています。
成長促進のための抗生物質の過剰な投与により、感染症にかかりやすくなります。
培養肉であれば、家畜からヒトへの感染も防げるほか、家畜に対しての倫理面も守る事ができる大きなメリットのひとつです。
世界的な食糧危機への対策
世界の人口は増加を続けており、2050年には97億人を超えることが予想されています。
食肉人口がそれまでの1.8倍にも増えることが算出され、世界的な食糧危機がおこると言われています。
現在では地政学的な影響による輸送コスト等々、食肉のみならず、ほぼすべての食品が高騰しています。
今後もそういった影響を受け続け、食糧危機とともに懸念されています。
世界が注目する培養肉の市場予測
培養肉は2030年には食肉の10%を占め、約19兆円の市場規模に拡大するという予測がでています。(国際コンサルティングA.T.カーニー氏)
また、2040年には35%を占め、85兆円という大規模な市場に達する、という見込みを予想しています。
日本でも、2023年2月22日の衆院予算委員会集中審議で、「細胞性食品(培養肉)の安全確保の取組みを進め、表示ルールの整備をするなど、新たな市場を作る環境整備を進める。」
「日本発のフードテックビジネスを育成する。」と岸田首相が述べております。
世界的にも大変重要であり、喫緊な課題であるということがわかります。
いま培養肉が食べられるのはどこ?
海外ではシンガポール
2020年に世界で初めて培養肉の食用を商用化した国、「シンガポール」です。
シンガポールで大人気の屋台”Loo’s Hainanese Curry Rice”では、米国の食品ベンチャー企業”イートジャスト”が開発したナゲットが提供さています。
ニワトリの羽根の細胞から培養し、ナゲットとしてカレーにトッピングしています。
食べた感じは普通の鶏肉のナゲットと同じ、なんら違和感は無いとのことです。
イートジャストでは「まだまだ一般的に販売できる食品の大きさと価格ではないが、規模拡大を準備して年間約6800tの生産を目指し、スーパーでも手に入る価格にする」と述べています。
同時に、肉の塊についても開発を進めているようです。
日本では日清食品と日本ハムが実用化に向け開発中
日本では「日清食品と東京大学」が共同研究開発し、食べられる培養肉を国内で初めて作りました。
2025年には100g程度の培養肉ステーキの実現を目標としてるようです。
日本ハムでは、ニワトリの細胞から培養肉を作ることに成功しています。
今後はスケールの拡大に向け、培養肉の研究開発を進めていくということです。
まだ商用化には時間がかかりそうですが、近い将来は日本のスーパーにも並んでいると思います。
日本の食品メーカーは世界的に見てもレベルが高いので、高級和牛などを培養肉で作れるようになるでしょう。
まとめ 商用化の見通しについて
シンガポールではすでに商用化を実現し、低コストを目指して拡大しています。
日本では、様々なベンチャー企業と大手企業、政府が一体となり、取り組もうという動きが出ています。
2030年頃にはスーパーや店頭での販売を目指す構想のようです。
諸外国からは若干の遅れはありますが、安全面や品質の問題など政府間とのスピーディーな取組みにより、世界的にリーダーシップを取れる立場になれる可能性があります。
政府が掲げている「フードテックビジネス」は、世界的にも大規模な市場になるでしょう。
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